小麦粉市場が飽和する中、”米粉×おかずぱうんど”で唯一無二のブランドを確立するまで
以前、プロジェクト開始当初の取り組みとして下記の記事としてご紹介した事例でしたが

その後、認知度が拡がり、病院内での販売や、大手企業様からのマルシェ出店のお声かけを頂いたり、社員用に提供商品としての購入のご希望などを頂くにいたった嬉しいご報告をいただきましたので改めて事例紹介させていただきます。
「売れる商品」は、レシピや原材料の良し悪しだけで決まるものではありません。誰の、どんな場面の、どんな困りごとを解決するのか。その商品はどんな売り場で、どんな理由で選ばれるのか。原価は見合っているのか。そして、その優位性はどうやって守るのか——。これらを一つひとつ設計していくことが、新商品開発の本質です。
当社では「集客起点ビジネス構築法®」という考え方を軸に、商品ができあがってから売り方を考えるのではなく、そもそも何を作るべきかという企画段階から集客を設計するご支援をしています。また、その中核となるSEOの手順を体系化したものが、独自フレームワークの「戦略的SEO対策Marketics™」です。
今回ご紹介するのは、創作料理店居酒屋「海んちょ」の女将様とご一緒した、焼き菓子の新商品開発・ブランド構築の事例です。パウンドケーキという、決して珍しくはない焼き菓子を、どのように”唯一無二のカテゴリー”へと育てていったのか。セミナーでお伝えしている手順に沿って、実際の案件で私が何を考え、何を提案したのかを、できるだけ具体的にお伝えします。食品の新商品開発や販路開拓を検討されている事業者様のご参考になれば幸いです。
クライアント様のご状況
創作料理店居酒屋「海んちょ」をご夫婦で営む女将様は、当社が運営に携わる女性起業塾「女性起業UPルーム」の修了生でもいらっしゃいます。「海んちょ」のホームページのご自身での運営などでもご相談をいただいており、お二人のお人柄で日吉の地域の皆様にも常連さんが多い、温かさあふれるお店です。コロナ禍のタイミングで補助金を活用して、新たに焼き菓子の製造販売の新規事業立ち上げにチャレンジされることにされました。それにあたって、ネットショップサイトの構築をご依頼いただきました(サイトはこちら:kozutsumi.shop)。
当初のご相談は、次のような内容でした。
「焼き菓子を焼いて売ろうと思っています。パウンドケーキで考えていて、甘酒と横浜の地産地消の果物を使ったスイーツとしてのパウンドケーキと、簡単な食事にもなる『おかずぱうんど』のようなものも考えています。ネットでも販売したいので、ネットショップの立ち上げをお願いしたい」
女将様は既に、ご自身のアイデアをいくつかお持ちでした。私の役割は、ゼロから商品を考えることではありません。このアイデアのどこに勝機があるのかを見極め、それを「売れる商品」として成立させる形に設計し直すことです。
焼菓子の製造販売は、同じ「食のビジネス」であっても居酒屋という店舗ビジネスと違って、あらゆる意味で、ビジネスの可能性を拡げる新しいチャレンジです。また、食を販売のネットショップは楽天市場をはじめ既に先行企業が多くあり、単にきれいなサイトを作って終わり、では意味がありません。売れるネットショップを目指すには狙う「検索キーワード」を厳選し、「その市場で選ばれること」コンセプトや特長を持つことが必要だと考えました。
だからこそ、いきなりサイト制作に入るのではなく、集客起点の手順を一つずつ踏むところから始めています。
ステップ1:「強み」の確認
最初に確認するのは、必ず「強み」です。何を作るかを決める前に、この事業者様が何を持っているのかを棚卸しします。
海んちょさんの場合、明確な強みが3つありました。
ひとつは、創作料理店を営む食のプロとしての調理技術です。レシピ開発ができる、味を仕上げられる。これは食品事業において決定的な資産です。
ふたつめは、居酒屋という母体があること。多様な食材を日常的に仕入れているルートがあり、店内に工房を構えられる場所もある。この点は後の「原価」の話で決定的に効いてきます。
みっつめは、既存のお客様との関係です。長年通ってくださっている常連さんがいる。新商品を最初に食べていただき、率直な反応をもらえる相手がいるというのは、テストマーケティングの環境が最初から整っているということです。
この強みの確認を飛ばして「流行っているから作ろう」と進むと、途中で必ず無理が出ます。逆に、既にお持ちの資産を活かせる方向で商品を設計できれば、他社が簡単には真似できない優位性になります。
ステップ2:市場の状況の確認
次に、参入しようとしている市場がどうなっているかを確認します。
女将様が構想されていたのは、甘酒と横浜の地産地消の果物を使ったスイーツとしてのパウンドケーキと、簡単な食事にもなる甘くないパウンドケーキ。素材の発想としては、すでに十分に魅力的なものでした。
しかし市場という視点で見たとき、気がかりな点がありました。小麦粉の焼き菓子市場は、すでに完全な飽和状態だということです。街の洋菓子店、カフェ、通販サイト、コンビニのスイーツまで含めれば、選択肢は無数にあります。甘酒や地元の果物という素材の良さがあっても、「小麦粉のパウンドケーキ」という土俵で戦う限り、その差は消費者には伝わりにくい。後から参入して「美味しいパウンドケーキです」というだけで選ばれる理由をつくるのは、現実的に難しいと判断しました。
一方で、当時確実に高まりつつあったのが米粉・グルテンフリーの市場です。コロナ禍による健康意識の高まり、そして「ギルティフリースイーツ」——食べても罪悪感の少ないお菓子——への需要の拡大。この流れは一過性のブームではなく、生活者の価値観の変化に根ざしたものだと感じていました。
そしてこの土俵であれば、甘酒という発酵素材との相性も良く、素材のストーリーも活きてきます。ここが、私が米粉・グルテンフリーへの変更をご提案した理由です。
市場の状況を見るときに大事なのは、「今どれだけ大きいか」だけでなく「これからどちらに向かうか」です。すでに大きな市場は、それだけ強い競合がひしめいています。伸びつつある市場に早めに入ることが、小規模事業者にとっては現実的な戦い方になります。
ステップ3:顧客ニーズの調査
市場のトレンドを掴んだら、次はもっと解像度を上げて、具体的にどんな方がどんな理由で必要としているのかを調べます。
米粉・グルテンフリーの需要は、ひとかたまりではありませんでした。掘り下げていくと、いくつもの異なるニーズが見えてきます。
小麦粉アレルギーの方。これは子どもにも大人にも増えています。アレルギーのある方が「自分も食べられるお菓子」を探すとき、選択肢はまだ限られています。
健康志向・ダイエット志向の方。バターや白砂糖をたっぷり使ったお菓子は避けたいけれど、甘いものを完全に断つのはつらい。この層は非常に厚い。
子育て世帯。私自身も女将様も、子育てをしながら仕事を続けてきました。朝、子どもに何を食べさせるか。ロールパンや菓子パンでは栄養が偏る。かといって手の込んだものを作る時間はない。ここには切実なニーズがあります。
高齢者とそのご家族。米粉は消化の面でも高齢者にやさしい素材です。そして高齢の方の中には、食が細くなって栄養不良に陥っている方が少なくないと聞いていました。少量でも栄養が摂れて食べやすいものへのニーズがあります。
術後などで食が細っている方への贈り物を探している方。ご家族やご友人にお見舞いを贈りたいけれど、バターと砂糖がたっぷりの一般的な焼き菓子は贈りづらい。「身体にやさしいスイーツを贈りたい」という需要は確実にあるはずだと考えました。
当時、大手製粉会社のトップが「完全食」という考え方を打ち出しており、私自身もその考え方に強く共感していました。食事とお菓子の中間——お菓子でありながら栄養を摂れるもの。これらのニーズが重なった時点で、私の中では「これしかない」というくらいの確信がありました。
なお、後から分かったことですが、働く男性という想定外の層にもニーズがありました。仕事をしながら食べるお菓子として選ばれているようです。私自身も、小麦粉を食べると眠くなるためパフォーマンスを考えるとクッキーなどは避けたい。白砂糖も身体に良くないという認識を持っています。この感覚は、決して私だけのものではなかったということです。
ステップ4:競合調査
ニーズが見えたら、そのニーズに対して既に誰が何を提供しているのかを確認します。
米粉のパウンドケーキ、グルテンフリーの焼き菓子は、当時すでに一定数存在していました。ここだけで勝負すると、いずれ埋もれる可能性があります。
一方で、「甘くない、おかず系の焼き菓子」という領域を見てみると、状況が違いました。フランス菓子には「ケークサレ」という、甘くない食事系のパウンドケーキがあります。しかしこの名称は、日本ではまだ広く認知されていません。専門で扱うお店もほとんどない状態でした。
そして私は、この「認知されていない」という事実を、リスクではなくチャンスだと捉えました。すでに浸透しているカテゴリーに後から参入すれば、競合との比較にさらされます。しかし、まだ名前のないカテゴリーであれば、自分たちがその名前をつくり、代名詞になれる可能性があります。最強の「カテゴリー戦略」です。
競合調査は「勝てないから諦める」ためではなく、「どこなら勝てるか」を見つけるために行うものです。
ステップ5:ポジショニング・差別化ポイント
ここまでの調査を踏まえて、どこに立つかを決めます。海んちょさんのポジショニングは、次のように整理しました。
「米粉」×「おかず系」×「地元の食材」×「居酒屋の技術」
米粉だけなら競合がいる。おかず系だけならケークサレという先例がある。しかしこの掛け合わせで、かつ横浜の地産地消の食材を使い、創作料理店の技術で仕上げるとなると、代替できる存在はほぼいません。
そして、このポジショニングを裏付ける要素として、いくつかの差別化ポイントを設計しました。
原価が見合う構造を持っていること。
これは非常に重要な差別化です。野菜やチーズ、魚といった具材を使う商品は、材料費が高くなりがちです。加えて、こうした食材は少量では仕入れにくく、ロスも出やすい。個人や小規模事業者がケークサレのような商品を単独で始めると、この仕入れの壁にぶつかります。実際、その後ケークサレを専門に扱うお店も出てきましたが、個人で始めるには材料の仕入れが意外とハードルとなり、撤退されたケースもありました。
しかし海んちょさんの場合は、居酒屋という母体があります。もともと創作料理店として多様な食材を日常的に仕入れている。その食材を焼き菓子にも流用できるのです。つまりこの商品は、「海んちょさんだからこそ、原価が成立する商品」でした。同じ商品を他の誰かが真似しようとしても、仕入れの構造がなければ採算が合わない。
「あったらいいな」ではなく「これでなければ困る」を狙うこと。
一般的なパウンドケーキは、美味しければ買っていただけますが、なくても困らない商品です。だからこそ価格競争になり、季節や気分に左右されます。一方、小麦粉アレルギーの方にとっては、食べられるお菓子は限られています。食が細くなった高齢のご家族に何か贈りたい方にとっても、選択肢は多くありません。「他にない」という状態をつくることが、必要度を上げるということです。
忙しい働くママが保育園に通わせる子どもに食べさせる朝食に
「おかずぱうんど」ケーキのアイデアを聞いた時に、私自身も3人の子どもを保育園に預けながら仕事をする中、「シーチキン×たまねぎ×コーン×マヨネーズ×ホットケーキミックス」で焼いたパウンドケーキを簡単に焼けて、甘すぎず、子どももパクパク食べてくれる朝食として作っていたのを思い出し、これはぜったいに世に出すべき商品と思いました。保育士の先生から「朝ごはんにもちゃんと野菜を食べさせてください。」と注意され、菓子パンやロールパンなら自分でパクパク食べてくれるものの、ブロッコリーやプチトマトとなるとなかなか簡単には行きません。忙しい朝でも子供がパクパク食べてくれて、野菜やたんぱく質、炭水化物、栄養が整う朝食が必要なのです。女将も同じく仕事をしながら子育てをされており、その中で栄養への心配りをされてきました。さらに、「米粉グルテンフリー」であれば、小麦粉アレルギーのお子さんにも対応できます。
パウンドケーキを購入後は、切り分けて、冷凍庫に保存すれば、毎朝、数切れずつ解凍すれば、すぐに栄養が整う、完璧な朝食です。
必要とされるシーンを描きながら商品設計が進みました。
時間栄養学というストーリーの裏付け
女将様は以前、時間栄養学を学ばれた経験がおありでした。『時間栄養学』とは、何を食べるかだけでなく「いつ食べるか」に着目する考え方で、昨今ますます注目が高まりつつある分野です。単に「健康に良さそう」というふわっとした訴求ではなく、学術的な裏付けのある考え方を背景に持つこと。これによって「なぜ朝にこれを食べるといいのか」という説明に説得力が生まれます。作り手ご自身が学んできた背景がストーリーになっているという点でも、他社が簡単には真似できない差別化になっています。
ステップ6:検索キーワード調査からの市場のトレンドとニーズ確認
ここが、当社の「戦略的SEO対策Marketics™」の考え方が最も特徴的に現れる部分です。
多くの場合、SEOのキーワード選定は「サイトができてから」「集客のために」行われます。しかし当社では、キーワード調査を商品企画の段階で行います。なぜなら、検索キーワードは生活者が実際に言葉にした需要そのものだからです。
どんなキーワードが、どれくらいの回数、どんな組み合わせで検索されているか。これは、アンケートやヒアリングよりも正直なデータです。人は他人に対しては本音を言わないことがありますが、検索窓には本音を打ち込みます。
「米粉」「グルテンフリー 焼き菓子」「小麦粉不使用 お菓子」——こうしたキーワードの動向を見ることで、市場のトレンドとニーズの両方を同時に確認できます。しかも、それが増えているのか減っているのか、どんな言葉と一緒に検索されているのかで市場の顧客ニーズまで見えてきます。
このキーワード調査によって、ステップ2〜4で立てた仮説——米粉・グルテンフリーの需要が伸びている、ギフト用途のニーズがある、おかず系はまだ言葉として定着していない——が数字で裏付けられました。
そして重要なのは、この段階で分かったキーワードが、後の商品名・キャッチコピー・サイト構成のすべてに反映されるということです。作ってから「どう売るか」を考えるのではなく、需要のある言葉から逆算して商品を設計する。これが集客起点の考え方です。
ステップ7:キャッチコピー・コンセプトの設定と、商標登録
ここまでの調査を踏まえて、商品の名前とコンセプトを固めます。
ここで改めて注目したのが、最初のご相談の中のアイデアにあった「おかずぱうんど」でした。
商品としてはフランス菓子の「ケークサレ」に近いものですが、「ケークサレ」という名称のままでは、フランス菓子に馴染みのない層には伝わらず、そもそも検索されません。一方、「おかず」と「ぱうんど」。どちらも説明不要で日本人には直接、意味が伝わる言葉です。初めて聞いた人でも「甘くない、おかず代わりになるパウンドケーキなんだな」と想像できる。そして何より、まだ誰も使っていない言葉でした。
競合調査とキーワード調査を経た目で見たとき、この呼び名は「まだ名前のないカテゴリーに、日本語で名前をつける」という、まさに探していた条件を満たしていました。そこで私からは、これがブランドコンセプトの主軸とし、「集客商品」としてネットショップを立ち上げることを据えることをご提案しました。
そして、この呼び名を主軸に据えると決めたなら、必ずセットで必要になるのが商標登録です。
レシピや手作り品の商品開発で避けられないのが、「アイデアが真似されやすい」という構造的な弱点です。どれだけ良い商品を作っても、レシピそのものは守れません。守れるのは、名前とブランドです。
実際、私自身が女性起業家支援の中でこの事例をご紹介したところ、同じような商品の販売をすぐに始められた方もいらっしゃいました。商標登録があることで、こうした場面でも安心して事例としてご紹介できますし、何よりブランドそのものを守る効果を発揮しています。
ブランド名やロゴマークについては、女将様のこだわりを尊重して採用しました。
商品設計の実行:米粉への移行と、ギフト市場への対応
コンセプトが固まったところで、実際の商品づくりに入ります。
米粉オンリーへの移行
米粉への転換をご提案したものの、「小麦粉の方が美味しく作れる」というこだわりから、米粉一本に絞る決断はすぐにはかないませんでした。他でも食で起業する方に「これからは米粉で作らないと販売は難しいと思う」とご提案することは多いのですが、「小麦粉の方が美味しい」「そうは言っても小麦のパンが好きな方は多い」と受け入れていただけることは多くはないです。食のプロとして当然の判断だと思います。今回も、まずは小麦粉と米粉の2本立てでスタートすることになりました。
実際に販売してみると、以前からの居酒屋のお客様の中に「大人になってから小麦粉アレルギーを発症した」という方がいらして、米粉の焼き菓子をとても喜んでいらっしゃるコメントをくださったり、女将様ご自身が、この需要を実感されました。
加えて、工房で小麦粉と米粉の2種類を同時に扱うことは、運営上もかなり煩雑でした。そして何より、試行錯誤の末に「米粉でも十分に美味しく作れるレシピ」が見つかってきた。この3つが重なり、最終的に米粉オンリーへと移行することになりました。
また、米粉にこだわると、ほかの代替品が圧倒的に少ないことから、根強いファンになってくださることも多いのです。健康へのこだわり、米粉、グルテンフリーのこだわりは、検索キーワードの検索ボリュームを調べてみると、ご自身が感じている以上に大きな市場に育っていることが分かります。
ギフト市場への対応
当初のご相談時点では、パウンドケーキを一本まるごと販売する想定でした。私からは、ギフト向けパッケージを用意しネットショップに掲載することでした。
自家需要とギフト需要では、購入の動機も、許容される価格帯も、購入頻度もまったく異なります。自分用であれば「ちょっと高いな」と思う価格でも、贈り物であれば妥当と判断されることは多い。そして何より、ギフトは「贈る理由」がある限り繰り返し発生します。
切り分けた個包装商品を追加すること。パウンドケーキ1本単位ではなく、2種類を選んで半分ずつ注文できるようにすること。こうすることで、「いろいろ試したい」という自家需要にも、「見栄えよく贈りたい」というギフト需要にも応えられます。
この商品には「食が細くなった方に、身体にやさしいものを贈りたい」という明確なギフトシーンがあると想像しました。
実際にそのような目的で健康を気遣う遠方の知人に贈られる目的でのご注文を頂いているようです
SEO対策を前提としたサイト設計
商品が固まったところで、いよいよサイトの構築です。
ステップ6で調査したキーワードを、サイト全体に反映していきます。トップページのタイトルタグ、商品ページの見出し構造、コンテンツ記事のテーマ選定。すべてが「実際に検索されている言葉」から逆算されています。
WordPressのネットショッププラグインによるECサイト
このとき採用したのが、WordPressのネットショッププラグイン「Woo Commerce」でした。
理由は、運営コストがクレジット決済で売れた時の手数料3.5%程度のみという圧倒的に安いこと。さらにWordPressであれば、商品ページのSEO設計はもちろん、コンセプトを丁寧に語るページ、マルシェの出店予定、使用している食材の生産者の紹介といった記事を継続的に追加できる、などのメリットが大きいからです。
Shopifyやカラミーショップなど専用のネットショップサービスの多くは、月額使用料が5,000円程度~かかってしまいます。より安価なBASEやStoresなどのツールは、SEO対策に限界があり、商品数が少ないネットショップではSNSなどからの流入頼みになります。販売時の手数料も結局10%程度かかることが多く、利益率の高い商品でないと合わないことが多いです。ブログなどのコンテンツページを自由に増やしにくいといった弱点があります。
この「記事を積み上げられる」という点が、実は非常に大きい。食品ブランドにおいては、商品ページだけでは伝えきれない情報——なぜ米粉なのか、どんな食材を使っているのか、誰がどんな想いで作っているのか——こそが、購入の決め手になります。それらが検索の入口にもなり、同時に信頼の裏付けにもなるのです。
結果として、現在は主要な検索キーワードで1位を獲得しています。「おかずぱうんど」という言葉自体も認知が広がり、レシピ投稿サイトでも人気カテゴリーの一つになりつつありますが、商標登録で守っているため、競合が同じ名前で参入しにくい状況を保てています。
新規事業の立ち上げ期において、固定費は少なければ少ないほど良い。まだ売上が読めない段階で毎月の固定費を抱えることは、事業を続ける上で負担になります。特に商品数が少ないオリジナルブランドのネットショップでは、SEO対策がしづらく、売上が増え安定してくる前に、撤退するケースも少なくありません。
商品点数が限られていて、自社ブランドの世界観をしっかり伝えたい。そういう条件であれば、この構成は非常に相性が良いと考えています。
食べてもらう機会の創出
どれだけコンセプトが優れていても、食品は「食べてみないとわからない」商品です。特に米粉の焼き菓子は、多くの方にとって未体験のもの。「米粉ってパサパサするのでは?」という先入観を持つ方も少なくありません。
だからこそ、実際に口にしていただく機会をどう作るかが決定的に重要でした。
ここで大きな力を発揮したのが、マルシェへの出店です。横浜の地産地消に取り組む低農薬の果物農家様、横浜のごま油の会社様、横浜市の地産地消の取り組みなど、もともと飲食店舗としても地産地消店としての取り組みをされていたからこその地域のネットワークを活かして出店機会を重ねていかれました。横浜市役所内でのマルシェ出店など一般的には出店が難しい場所での販売がかなったのは、普段からの真摯な事業姿勢からの信頼ゆえかと思います。
マルシェの価値は、単に売れることではありません。お客様の反応を直接見られること。「これ何?」という最初の一言から、食べたあとの表情まで、すべてが商品改善とコピーライティングの材料になります。そして一度食べて気に入ってくださった方は、その後、マルシェにリピートされたり、店舗に注文されたり、さらにはネットショップで知ってくれたりリピートしてくださっています。クール便などの送料負担や受注生産性を取っていることから、マルシェでのお客様はマルシェでのリピートが多いようです。
リアルで体験していただき、ネットで継続的に情報を発信し、検索から新規のお客様にも見つけていただく。この循環が回り始めたことで、確実にファンが増えていきました。リアルとネットは、どちらかを選ぶものではなく、相乗効果を狙って設計するものです。
さらに、こうした地域での活動実績が評価につながりました。神奈川県が女性起業家の開発する商品を対象とする「なでしこブランド」への応募をおすすめし、見事認定を受けています(認定は「米粉と甘酒のパウンドケーキ」と「おかずパウンドケーキ」の2品)。第三者からの認定は、それ自体が信頼の証となり、企業様からのお声がけにもつながる資産になります。
食ビジネスは美味しければうまくいくわけではない
ここまでお読みいただいてお分かりの通り、この事例で行ったことの多くは、味そのものとは別のところにあります。
もちろん、美味しいことは大前提です。実際、この商品を美味しく仕上げられたのは、食のプロである女将様の腕あってこそでした。どれだけ企画が優れていても、味が伴わなければリピートは生まれません。
一方で、食のプロは「美味しければ売れる」と考えてしまいがちです。
ただ、実際には美味しいだけでは足りないのです。それは、レストランを選ぶ際にも、店前のランチの食材の説明を読んで「美味しそう!」と思って店内に入るのと同じです。
「食べてみたら美味しさは分かる」かもしれませんが、「食べてみたい」と思ってもらうためには、言葉や写真で、その味を「想像させる」こと、もしくは「買うべき理由」を伝えること、を伝える必要があります。
ネットで販売したり、食べたことのない方にもまずは食べてみて頂くには、「このこだわりなら食べてみたい。」「さぞかし美味しいものだろう」と想像させるような説得力が必要です。
美味しいお店が閉店し、美味しい商品が売れ残る。そうした光景を、私は何度も見てきました。理由はシンプルで、市場に選択肢が多すぎるからです。「美味しい」は、選ばれるための必要条件ではあっても、十分条件ではありません。
必要なのは、自社の強みを確認すること。市場の状況を読むこと。顧客ニーズを具体的に描くこと。競合を調べて勝てる場所を見つけること。ポジショニングを定めること。検索キーワードから実際の需要を確認すること。そして、伝わるコンセプトと名前をつくり、それを守ること。
これらは味づくりとはまったく別のスキルであり、作り手が一人で全部背負うには重すぎる領域でもあります。だからこそ、企画の段階から一緒に考えるパートナーが必要なのだと考えています。
成果
- 主要検索キーワードで検索1位を獲得
- レシピ投稿サイトでも人気カテゴリーの一つに成長し、「おかずぱうんど」の認知が拡大
- 商標登録により、模倣品・競合の参入を抑えながらブランドを保護
- 神奈川県「なでしこブランド」認定を取得
- マルシェでの試食体験とネットでの情報発信が相乗効果を生み、リアル・オンライン双方でファンが拡大
- 企業からのマルシェ出店の声かけや、福利厚生としての導入相談も
- 現在はスイーツとしての米粉パウンドケーキと、おかずパウンドケーキの2本立てで展開。マルシェで手に取られやすいのは前者である一方、他にはない後者には根強いファンがつき、意外にも男性ファンが多いのも特徴
まとめ:新商品開発のご相談を承っています
「焼き菓子を売りたい、ネットショップを作ってほしい」というご相談から出発し、強みを確認し、市場を読み、顧客ニーズを掘り下げ、競合を調べ、ポジションを定め、検索キーワードで需要を裏付ける。そして、ご本人が何気なく口にされたアイデアの中から最も可能性のあるものを見つけ出し、それを主軸に据えて商標で守る——。
これが、当社が「集客起点ビジネス構築法®」および「戦略的SEO対策Marketics™」としてお伝えしている手順であり、実際の案件でも同じ順番で進めています。集客は、商品ができあがってからではありません。何を作るかを決める、勝てる商品、集客商品の企画で決まります。









